【ワンズ・ラフのストーリー⑪:ゲンキが森に帰るとき】

今回のクラウドファンディング、最も大切な週末を迎えました。最後までの皆さまの温かい応援をよろしくお願いいたします。

今日のこのテーマを書くのは今でも一番辛く、先送りにしてきた自分がいます。でも、皆さまのここまでたくさんのご支援をいただくなか、自分自身のゲンキ離れが必要なときかもしれません。

ゲンキが旅立つ前日の4月1日に僕が感じていたことを書きます。

3月上旬からのゲンキの原因不明の体調不良、そして3月下旬急変からの緊急手術を経て、ゲンキの姿はみるみる衰退していきます。余命宣告も受け、化学療法は止めることに。

そしてサクラが残る4月1日、あることを決断します。
「よし、ゲンキが大好きなワンコの森の渓流に行こう!」そう言ったのは僕。春の穏やかなこの日しかない…直感でした。でも正直怖かった。この外出の無理でゲンキが旅立ったらどうしよう…。その日の記憶、実は今もあまり思い出せないのです。

残っているのは、一心に撮った写真だけ。

大好きな渓流。ゲンキは最期の残った力で楽しんでいるようでもあり、力をふりしぼっているようでもありました。ちょっと冷たい川にも足をつけ、体調が悪くなってから下がりっぱなしのしっぽが「ビンッ」とあがったような気がします。

ゲンキにとってのワンコの森の長い旅は、僕のリュックの中からはじまり、僕のリュックの中で終わりました。僕のわがままですが、生きていれば毎日リュックに入れて一緒にガイドをしたかった。その夢は叶いませんでしたが、今は森の至るところから、ゲンキが僕を励まし続け、見守ってくれています。

生きるものはいつか自然に帰る。ワンコの森の渓流に行くと、僕は今でもゲンキに会えるのです。

ワンズ・ラフ 小田 明